「第40回地域づくり団体全国研修交流会宮崎大会」第4分科会報告の最終回です。
11月3日午前は宮崎県都農(つの)町を視察しました。
都農町は新富町から高鍋町(前日の宿泊地)を挟んで、さらに北に位置し、人口はおよそ9,500人。産業は新富町と同じく農業で、ブドウなどの果樹栽培、施設園芸、畜産などが盛んな町です。
最初に坂田町長と宮司の案内で都農神社を参拝(写真)。同神社は日向国の一之宮として由緒ある神社で、この日は明治天皇の誕生日にちなみ「明治祭」が行われていました。
その後、隣にある「道の駅つの」に立ち寄りました(写真)。
道の駅の入り口でこんなポスターを見つけました(写真)。「都農」を逆さにして「農の都を愉しむ」というキャッチコピーを作っていました。「愉しむ」には、『「楽しむ」より、ちょっぴり深くて広い』という意味を込めているとのこと。
ちなみに、同町は北海道佐呂間町と姉妹町になっており、店内には佐呂間町周辺特産品のコーナーがありました。
さらに、店内で九州リーグの男子サッカーチーム「ヴェロスクロノス都農」のポスター(写真)を見かけました。今日の視察のテーマはこのチームに関わる話しでした。サッカーチームに地域おこし協力隊を活用する仕組みは、時系列的に都農町が先に立ち上げ、後に新富町が参考にしたとのことでした。
高台にある都農ワイナリーに移動して3団体から事例発表を聞きました。最初に同町職員から、同町における地域おこし協力隊の概要について説明がありました。特徴としては、協力隊員への報償費に、専門性や活動内容により段階を設けるステージ制を採り、任期中に報償金の額を上げている(ただし、一隊員への特別交付税の上限額は変わらないため、その分活動経費の支給は減る)。隊員は町とは個人事業主の委託契約で任用関係は無く、受入団体に所属する仕組みになっている。受入団体には、サッカー関係では、ヴェロスクロノス都農やツノスポーツコミッション、競技場を管理するNPOなどがある。町と受入団体は協力隊員の所属と活動に関する委託契約を結んでいるとのこと。
ヴェロスクロノス都農に在籍する協力隊員には、今年度から公式戦出場を活動と認めており、その条件として試合前後にSNSでの町の情報発信、受付や観客席で町のPR冊子配布などを行うこととしている。その適用にあたっては新富町の例を参考にしたという。現在、隊員は町全体で36人いて、任期終了後の定住率は14.9%で宮崎県の平均62%(2023年度)に比べると低く、課題となっている。参加者からの質疑の中でその背景として挙がっていたことは、男子サッカーの場合、選手の移籍先が女子と比べて、格段に多いことである。町としては流出することを想定しており、セカンドキャリアに向けた支援で少しずつ定着を図りたいとのこと。
次に、ツノスポーツコミッションの代表理事からは、ツノスポーツアカデミーの取り組みについて説明がありました(写真)。
同コミッションは、人口減少による1次・2次産業の担い手不足、都農高校の閉校などを背景に、スポーツで人を呼び込むことで地域課題の解決を図ろうと、町とコミッション、サッカーチーム運営法人が連携協定を結び、アスリートが町の担い手になる取り組みを考えたとのこと。スポーツアカデミーのほか、移住、交流人口、関係人口、地域経済活性化などの取り組みを行っている。
連携協定に基づき、三者は「つの職育プロジェクト」を展開している。サッカーに特化すべく、宮崎市で活動していたサッカーチームを誘致、アカデミー組織を整備した。アカデミーでは「新しい形の学校」として、通信制高校と連携して高卒資格を取れるようにしているほか、サッカーだけでなく、地域の事業者と連携して、職場や地域の行事での担い手経験を通じて、デュアルでのキャリア形成を図っている。このように高校生が町にいる仕組みを作り、幅広く、様々な世代の地域の大人が若者の育成に関わり、若者が町の新しい活力になることを目指している。なお、2022年にはスポーツ庁から「スポーツ・健康まちづくり優良自治体表彰」を受けているとのこと。
※参考:つの職育プロジェクト 〜スポーツ選手による町の課題解決〜(スポーツ庁ホームページへリンク[PDFファイル])
※ツノスポーツコミッションの代表理事のXカウントで事例発表の様子をポストしています。
ヴェロスクロノス都農の運営法人(J.FC宮崎)の担当者からは、チームにおける地域おこし協力隊員の活動について説明がありました。都農での活動は5年目を迎えている。サッカーは集団スポーツで人数が多く、地域が抱える課題に幅広く取り組むことが出来るという。町とサッカー選手が相互にサポーターになって支え合うイメージである。チームは32人中16人が協力隊員で、午前中に練習、午後は協力隊員として、農業、福祉、デジタル、観光分野に分かれて活動している。農業班は農家で手が足りないところに依頼を受けて行く形で、ビニールハウスの整備、エサやり、収穫作業といった力仕事などに従事している。デジタル班は「つの未来財団」で高齢者にスマートフォンやタブレット端末の操作を教えるなどしており、高齢者のファンや試合の来場者が増える効果があったという。福祉班は放課後児童クラブや高齢者の健康体操教室のサポートをしている。観光班は町の観光協会で観光PR、観光地の整備、ホームゲームのイベント企画運営を行っている。班ごとの活動のほか、全体で町のイベントPR、子どもの見守り、災害時の清掃活動などを行い、町民の生活をサポートしている。
今後に向けた協力隊活動の新たなビジョンとして、昨年から中学校部活の地域移行に絡み、バレー部のトレーニングの指導に関わる試験的な取り組みも行っている。30歳を超えると選手引退後のセカンドキャリアを考える時期であり、チームのフロント業務を体験してもらい、運営法人への就職や都農町への定住につなげていく。さらにサッカー以外のセカンドキャリアとして「アグリ部門」を作り、農業の技術習得と雇用継続を図ることも考えているとのことでした。
<都農ワイナリーの風景>
▲都農ワイナリーで昼食と都農ワインを試飲。
▲都農ワイナリーは高台にあり、晴れていたので市街地と海がよく見えました。
今回はスポーツ分野における地域おこし協力隊制度の活用例として、優れた事例を視察することができました。深川市においてもスポーツ分野で様々な活動が行われています。一連の報告が深川市における地域づくりに役立つことができれば幸いです。